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脂質異常症「低HDL-コレステロール血症」について

監修:千葉大学医学部附属病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 横手 幸太郎

低HDL-コレステロール血症は、脂質異常症です。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007、2012)では、動脈硬化性疾患の発症リスクが高くなる状態を「脂質異常症」と定義し、その診断基準として、LDL-コレステロール値≧140mg/dL(高LDL-コレステロール血症)、トリグリセリド値≧150mg/dL(高トリグリセリド血症)およびHDL-コレステロール値<40mg/dL(低HDL-コレステロール血症)を提唱しています。また、動脈硬化性疾患発症の絶対リスク(10年間の死亡率)において、動脈硬化の発症および進展を促進する疾患・リスクの一つに、低HDL-コレステロール血症が挙げられています。

脂質異常症:スクリーニングのための診断基準(空腹時採血)
LDL-コレステロール(LDL-C) ≧140mg/dL 高LDL-コレステロール血症
120〜139mg/dL 境界域高LDL-コレステロール血症 (*)
HDL-コレステロール(HDL-C) <40mg/dL 低HDL-コレステロール血症
トリグリセリド(TG) ≧150mg/dL 高トリグリセリド血症

*動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2012)において、他の危険因子との相乗により発症リスクが高まる 診断基準として、新たにLDL-コレステロール値 120〜139mg/dL を「境界域高LDL-コレステロール血症」が追加されました。

HDL-コレステロールの生理的意義

コレステロールは、体や細胞のはたらきを維持するために不可欠な成分です。脂肪のとり過ぎなどにより余ったコレステロールは体に有害な場合もあるため、HDLという脂質の運搬を担う粒子に取り込まれ、血液に乗って肝臓へと送られ排泄処理されます。動脈硬化の促進因子である過剰なコレステロールを排泄する役割を担うHDL-コレステロールは、「善玉コレステロール」とも呼ばれています。
HDL-コレステロールが低い状態を、低HDL-コレステロール血症として動脈硬化との関わりから治療の必要性が唱えられています。また遺伝的にも低HDL-コレステロール血症を示す病気が知られており、動脈硬化性疾患とは異なる病気を発症することが知られています。

低HDL-コレステロール血症は、動脈硬化性疾患と密接な関係にあります。

<HDL-コレステロールと冠動脈疾患>

NIPPON DATA80(厚生労働省が指導している日本のコホート調査)によるとHDL-コレステロール値の低下に伴い冠動脈疾患の発症率が上昇し、特に40mg/dL未満になると冠動脈疾患の発症の危険性が急に上昇します。

HDL-コレステロールと冠動脈疾患合併率

低HDL-コレステロールは、冠動脈硬化疾患のリスクとして挙げられますが、その低下の要因には、原発性や続発性の疾患が知られています。

<HDL-コレステロールと脳卒中>

富山県小矢部市のコホート研究において、全例でのHDL-コレステロール高値群(≧60mg/dL、基準群)に対する低値群(<30mg/dL)の脳卒中発症の相対危険度はおよそ3倍で有意に高くなることが示されました(P=0.007

HDL-コレステロールと脳卒中発症の相対危険度

HDL-コレステロールが著しく低下している場合

HDL-コレステロールが著しく低下している場合、生活習慣が原因でみられるHDL-コレステロールの低下の原因以外にも以下のような要因を考慮しなくてはいけません。HDL-コレステロールの著しい低下をもたらす疾患やその原因によって、原発性や続発性に分類されます。重度な肝疾患、腎疾患など他の疾患を原因とする場合を続発性、その他主に遺伝的な原因によるものを原発性と呼びます。
特にHDL-コレステロールが20mg/dL未満(※1)と著しく低下している場合には、 レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症やタンジール病など原発性の疾患の可能性もあります。2015年7月1日付で厚生労働省より難病指定されたLCAT欠損症については千葉大学で開発中のLCAT遺伝子治療用ヒト脂肪細胞による治療法も紹介されています。また『難病情報センター』にも同様の情報が公開されています。

低HDL-コレステロール血症の原因(難病指定)
原発性または家族性 アポA1欠損症および変異体
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症)、魚眼病
タンジール病(
LPL欠損症
続発性 喫煙、肥満、運動不足
高糖質/多価不飽和脂肪食
高トリグリセライド血症
糖尿病
慢性腎不全(透析患者)
甲状腺機能亢進症
肝硬変症
悪性腫瘍
薬剤性(プロブコール、サイアザイド、β-blocker)

<レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症:指定番号259>

レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)は、細胞からHDLによって引き抜かれた遊離コレステロールをエステル化してコレステロールエステルとする酵素です。LCATが遺伝子異常によって欠損や機能異常を起こすと血液中のHDL-コレステロールが著しく減少してしまうとともに、余分なコレステロールが目や腎臓などに蓄積することにより、角膜混濁や腎機能障害、溶血性貧血などの障害を起こします。

「家族性LCAT欠損症」医療関係の方

PDF 家族性LCAT欠損症

<タンジール病:指定番号261>

ATP binding cassette transporter A1(ABCA1)は、細胞からコレステロールをHDLが引き抜く際に必要なタンパク質で、遺伝子異常によって欠損や機能異常が生じるとHDL-コレステロールが生成されなくなります。また細胞からのコレステロール搬出が障害され、コレステロールが骨髄、肝、脾、リンパ節、皮膚、大腸粘膜、平滑筋などに泡沫細胞が認められ、その結果種々の症状をきたします。

(※1) 厚生労働省から2015年7月1日難病指定された時点では、LCAT欠損症の診断基準は、HDLコレステロールが10mg/dL未満となっていますが、以降HDLコレステロールが10mg/dL〜20mg/dLである患者さんでも、LCAT欠損症と診断された方々がいらっしゃいます。

関連リンク

<厚生労働省>
厚生労働省ホームページ

<難病情報センター>
LCAT欠損症
タンジール病

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